あなたの「からだ年齢」は、何歳?

「健康」は、目に見えない最も大切な財産です
それを守り、若さを保つためには「運動」することが一番有効です。アクティブシニア世代は、アンチエイジングのトレンドリーダーで、いくつになっても健やかに年齢を重ね、元気なからだで人生を送りたいと思うものです。アンチエイジングの真の目的は、からだの内側から老化(エイジング)のスピードを緩やかにして若々しさを保ち、平均寿命と健康寿命の差(約10年)を縮めることです。実際の年齢より若々しい人と残念ながら老けて見える人がいるのは何故でしょう?その差の秘密は、「からだ年齢」です。「からだ年齢」とは、「脳年齢」「血管年齢」「骨年齢」「筋肉年齢」のことです。老化(エイジング)にともなっていろいろな機能が低下していきます。
「脳年齢」の老化は、認知症を引き起こします
認知症は、加齢による物忘れとは違い、「エイジング」にともない、記憶力・判断力の障害、社会生活や対人関係に支障が出てくる状態です。高齢化の進展とともに認知症の人数も増加しています。認知症の人は、65歳以上の高齢者では、平成22年度の時点で7人に1人程度(439万人)、認知症の前段階と考えられる軽度認知障害を有する人も加えると4人に1人の割合(820万人)です。年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されます。
脳を老化させる4つのNG習慣とは、①スマートフォンやパソコンに頼りすぎること、②人の悪口を言うこと、③家と会社の往復のみで運動不足であること、④行動がいつもワンパターンであること、と言われています。日頃からこの4つのNG習慣にあてはまらないように脳を刺激することが大切です。
「血管年齢」の老化は、動脈硬化やメタボリックシンドロームを引き起こします
動脈硬化はコレステロールが血管の内側にたまり、こぶのようなふくらみ(プラーク)ができます。このプラークを小さくすることで血管は若返ります。その主役は、善玉コレステロールです。コレステロールは、大切な栄養や細胞を包む細胞膜の材料です。
細胞の中のコレステロールは、善玉・悪玉の区別はありません。ただのコレステロールです。実は、善玉・悪玉と呼ばれるのは血液中を運ばれているときだけなのです。血液中でコレステロールを運ぶのは「たんぱく質」です。①肝臓から細胞へ新しいコレステロールを配達するたんぱく質を「配達トラック」とし、②細胞から古いコレステロールを回収して肝臓に捨てに行くたんぱく質を「回収トラック」とします。配達トラックと積み荷のコレステロールを合わせて「善玉コレステロール」と呼び、回収トラックと積み荷のコレステロールを合わせて「悪玉コレステロール」と呼びます。積み荷のコレステロールは同じで、運んでいるトラック(たんぱく質)と運ばれている方向が違うだけなのです。ですから、卵のコレステロールには、悪玉・善玉の区別はありません。卵を食べた後、吸収されたコレステロールが血液中を運ばれる時、善玉になったり悪玉になったりするのです。
回収と配達は、からだにとって大切な働きです。配達トラック(たんぱく質)が増えすぎると動脈硬化になり、回収トラックは細胞から余分なコレステロールを回収するので動脈硬化は改善され、プラークは小さくなります。回収トラックを増やすには、有酸素運動が有効です。ランニング以外の運動でも大丈夫。1日に歩く歩数が多ければ多いほど、善玉の値が高くなることがわかっています。
動脈硬化は検査で分かります。CAVI検査と呼ばれ、仰向けに寝た状態で両腕・両足首の血圧と脈波を測定します。検査時間は5分程度、血圧測定と同じ感覚でできる簡単な検査です。
「骨年齢」(骨の健康)は、自分では気づきにくいものです
骨の老化である骨粗鬆症で特に注意が必要なのは、閉経後の女性です。50歳以上になってくると女性ホルモンの減少により骨量がぐんと減ります。最大骨量の70%まで減少すると骨粗鬆症と診断されます。骨の新陳代謝(骨吸収と骨形成)により約3年で全身の骨が入れ替わります。
骨の新陳代謝のバランスは、生活習慣を改善することで何歳からでも整えることが可能です。丈夫な骨の三大要素は、「運動」「食事」「日光浴」です。骨を強くして健康寿命をアップしましょう。介護を必要とせずに自立して生活ができる、いわゆる「健康寿命」を伸ばしましょう。
骨年齢測定は、超音波を使って骨量を測定する検査です。X線検査ではないので安心です。
「筋肉年齢」の老化は、転倒につながり介護が必要になります
要介護状態に至る要因は、脳卒中・認知症・転倒・骨折などが挙げられます。「転倒しない」ためのカギをにぎるのは、ボディ・インナーマッスルと呼ばれるからだの深部にある筋肉の強化です。インナーマッスルをきちんとトレーニングすることで、健全な立位姿勢や歩行動作が保たれます。そもそも運動とは脳の指令に筋肉が反応することで、からだへの適切な運動という刺激は脳の活性化にも非常に有効です。運動することを継続すればアクティブに生きる活力の源になります。運動には、①有酸素運動、②筋トレ、③ストレッチ があります。若さと健康を維持するために重要な成長ホルモンの分泌を促すことが大事です。大人になっても成長ホルモンは放出され、代謝の促進や、筋肉や骨の形成において大切な役割をしています。
筋肉測定では、体組成計を使って測定をします。からだの筋肉・脂肪・水分・骨などの成分を想定して、筋肉量がわかります。
健やかに年齢を重ね、10年先、20年先もはつらつとした自分でいるために、生活習慣の改善をしましょう。今更遅いと思わなくても大丈夫です。からだ年齢は心がけ次第で変わります。その第一歩は、自分の弱点を知ること。まずは、あなたの脳年齢・血管年齢・骨年齢・筋肉年齢のチェックから始めませんか?
長寿社会を迎えたいま、老化を防ぎ、健やかに年齢を重ね、QOL(Quality of Life「生活の質」)を高めるため、まずは手軽な運動から始めましょう。
(マイタウン H.26年10月掲載)

Column
百合ヶ丘 いしだクリニック-川崎市麻生区の脳神経外科・頭痛外来・内科